meviy 2Dで手配した部品を分析し組んでみた
これまで木製おもちゃのスライドゲート機構を参考にして、金属製部品を使って高級感を出すとともに信頼性の高い製品の設計と製図する過程を紹介してきました。今回の記事では、ミスミサイトに会員登録してmeviy(メビー)の「2D図面加工品サービス(meviy 2D)」を利用した際の感想や意見を紹介します。
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1.meviy 2Dで手配した部品から加工法を推測する
前回の番外編1では、今回のシリーズで解説してきた金属製シャッターに設計しなおした部品をmeviy 2Dで手配するまでを解説しました。今回は番外編2として、納品された部品から加工方法の推測と組立をした際のポイントを解説します。
手配した部品形状から加工方法が推測できます。
- 丸物…円筒形状のため旋盤加工される。
- 板金…ブランク(曲げ加工前の平板)を「レーザー加工で切り抜いているのか?」あるいは「パンチで打ち抜いているのか?」、図面上では加工法まで指示をしていないため、手配された加工業者の設備に依存すると思われる。
meviy 2Dで手配した部品に加えて、その他購入部品など一式を紹介します(図8-1)。
手配した部品一式の中からmeviy 2Dで注文した部品ごとの形状と、納品物から分析して推測される加工法をまとめました(表8-1)。
表8-1 meviy 2Dで注文した部品ごとの形状と推測される加工法
部品名称 | 形状(投影図と実物) | 素材と加工順 |
ベース板❶ |
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素材:SPCC
板厚:t2.3 ①レーザーカット ②ニッケルめっき |
固定側板R➌ | 素材:SPCC
板厚:t1.6 ①レーザーカット ②曲げ ③ニッケルめっき |
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固定側板L❹ | 素材:SPCC
板厚:t1.6 ①レーザーカット ②曲げ ③ニッケルめっき |
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リンク板❺ | 素材:SPCC
板厚:t1.6 ①レーザーカット ②ニッケルめっき |
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ピン❻ | 素材:SUS303-D
①旋削 |
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軸❼ | 素材:SUS303-D
①旋削 |
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天板❾ | 素材:SPCC
板厚:t1.0 ①パンチング ②ニッケルめっき |
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後ろ板❿ | 素材:SPCC
板厚:t1.0 ①パンチング ②ニッケルめっき |
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駆動側板⓫ | 素材:SPCC
板厚:t1.6 ①レーザーカット ②ニッケルめっき |
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底板⓬ | 素材:SPCC
板厚:t1.6 ①レーザーカット ②曲げ ③ニッケルめっき |
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軸⓭ | 素材:SUS303-D
①旋削 |
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ホイール⓯ | 素材:SS400
①旋削 ②ニッケルめっき |
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接続板⓰ | 素材:SPCC
板厚:t1.6 ①レーザーカット ②ニッケルめっき |
各部品の端面や穴の状態などから加工方法を推測した根拠を説明します。
1) レーザーカット
対象部品:ベース板❶、固定側板R➌、固定側板L❹、駆動側板⓫、底板⓬、接続板⓰
・切断面の状態からダレやカエリがなく、レーザーで焼き切った感じが見て取れます(図8-2)。
穴の状態から、レーザー加工の開始点と思われる部分(黄色枠部)に素材が溶けた傷が見られます(図8-3)。
2) パンチング
対象部品:天板❾、後ろ板❿
・端面や穴の切断面の状態からダレ面が確認できます。端面にはパンチのつなぎ目にできるノッチ(黄色枠部)が散見されます。丸穴にはパンチを打ち抜く際にできるダレ面が見えます(図8-4)。
3) 旋削
対象部品:ピン❻、軸❼、軸⓭、ホイール⓯
・円筒面や端面の筋目(加工傷の痕)から、同心円状に筋目があることから旋盤で加工したことがわかります。U溝も切削されていることがわかります(図8-5)。
meviy 2Dで手配するめっき処理部品の注意点
今回の注文で複数部品に無電解ニッケルめっきを指示していましたが、ホイール⓯のみ防錆油が塗布された状態で納品されました(図8-6)。
ホイール⓯にめっき指示をしていたにも関わらず防錆油が塗布された状態で納品されたことから、めっき忘れを疑い、meviy 2Dの窓口に問い合わせましたが、すぐにめっき工程が施されていると連絡が来ました。meviy 2Dとしてトレーサビリティが保証されていることも確認できました。
トレーサビリティとは 「Trace(追跡)」と「Ability(能力)」の2つの英単語を組み合わせた言葉で、「追跡可能性」と訳されます。受発注や加工の工程など、原材料の調達から廃棄までの記録を取り追跡可能な状態にすることをいいます。それぞれの工程の履歴をチェックできるため、問題発生時にその原因を突き止めることが容易にするシステムです。 |
通常、めっき処理で脱脂工程が入るため、脱脂された部品が納品されると認識するのが一般的と思われます。ミスミによると、特に梅雨時にめっき後の部品に錆びが生じることが多発したことで防錆油塗布される場合があるとのことです。ただし、板金部品のめっき処理品には防錆油の塗布はありませんでしたので、加工業者に依存すると思われます。
ミスミによると、標準規格膜厚が無電解ニッケルめっきでは3~5μmとなって、膜厚のばらつきにより製品表面にめっき膜の載っていないホール(穴)が生じる場合があり、そのホールから錆が拡散する場合があるとのことです。
防錆油の付着不可の場合には見積もり依頼時に「防錆油塗布不要」と指示して欲しいとのことでした。
私見ですが、meviyで手配する製品は一品物の製品であることが多いと思います。そのため設計者自身が組み立てる可能性が高く、本来、脱脂目的も兼ねためっき指示をした部品に防錆油が付いていたら、設計者自身で脱脂処理すればよいと思います。
しかし、脱脂の必要性を理解していない設計者以外の人が組む場合、油脂の付いた部品を樹脂部品に接して組んでしまうとケミカルクラックによって数年後に樹脂割れを生じる可能性が高くなります。設計者以外の人が組み立てする場合は、図面に「防錆油塗布不要」と指示すべきでしょう。
ケミカルクラック(ソルベントクラックとも呼ぶ)とは 樹脂部品に油脂や薬品が付着した部分に曲げ応力やねじ止めの応力がかかることにより割れが生じることをいいます。 加工油や潤滑油が付着する可能性がある樹脂材料のうち、PC(ポリカーボネート)やABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)、アクリルなどは、油脂や薬品の耐性に欠けますので設計上も組立上も注意が必要で、必ず脱脂処理を行わなければいけません。 |
2.meviy 2Dで手配した部品を組んでみた
本シリーズ第2回目「1.組み立て順を考える」で紹介している、表2-2で示した組立順のイメージの通りに組立できるかも検証しながら実際に組んでいく手順を確認しましょう。
組立順① ゴム足の貼り付け
ベース板❶のゴム足のシール貼付部をアルコールで脱脂し、4隅に目測ですがゴム足❷を貼付します(図8-7)。
組立順② 固定側板Rと固定側板Lのねじ止め
ベース板❶に固定側板R❸と固定側板L❹をねじ止めします(図8-8)。
組立順③ リンク板のピン止め
2枚のリンク板⑤の中央にピン⑥を挿入しEリングで止め、これを計4セット製作し端部にピン⑥を挿入し連結します(図8-9)。
組立順④ 固定側板とリンク板セットの連結
固定側板R❸と固定側板L❹の間に軸❼を挿入しながらリンク板❺のセットとスペーサー❽を挿入しEリングで止めます(図8-10)。
組立順⑤ 天板と後ろ板のねじ止め
固定側板R❸と固定側板L❹に天板➒と後ろ板➓をねじ止めします(図8-11)。
組立順⑥ 駆動側板でモータを挟み、底板をねじ止め
モータを2枚の駆動側板⓫で挟み、駆動側板⓫と底板⓬をねじ止めします(図8-12)。
組立順⑦ リンク板セットと駆動側板の連結
2枚の駆動側板⓫の間に軸⓭を挿入しながらリンク板❺のセットとスペーサー⓮を挿入しEリングで止めます(図8-13)。
組立順⑧ ホイールと接続板のねじ止めとOリングの装着
ホイール⓯に接続板⓰をねじ止めし、Oリング⓱を被せてホイールセットを作ります(図8-14)。
組立順⑨ モータ軸にホイールセットをねじ止め
ホイールセットをモータ軸にねじ止めして完成です(図8-15)。
当初想定していた組立順通りに組み立てることができました。
完成品の動作を確認しましょう。
金属製に設計しなおしたシャッター機構(by meviy 2D)
まとめ
meviy 2Dで注文した部品には検査表の添付はありませんでしたが、出荷前に完成品検査を実施していると思われます。そのため、問題なく組み立てることができました。
今回のシリーズを通して、設計の考え方や注意点(ノウハウ)、製図する際の投影図の選択や寸法記入手順も参考にしてもらえたと自負しております。
設計自体に正解はありません。読者の皆さんの経験や知識を自由に設計に反映すれば、さらにユニークな製品を創造することができると思いますし、期待しております。
以上で、「換骨奪胎(かんこつだったい)!構造を真似て付加価値を与える設計」シリーズを完了します。
次回は新シリーズとして、読者の皆さんが知りたくてうずうずしているであろう幾何公差について、図面の描き方や意味合い、検査方法などを詳しく解説していきます。
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設計者が持つ想いや願い、そういうものをこめて作られたものにはいつしか心が宿る-meviy 2Dで見積体験2-はInformation |meviy (メビー)|ミスミで公開された投稿です。